「公式ディレクトリ掲載テーマ」で学ぶ WordPressサイト制作入門(一戸 健宏)を読みました。
※ソフトバンククリエイティブより書籍をいただいています。※
WordPress テーマをきちんと作りたい人向け
Twenty Thirteen テーマと、一戸氏作成の sonoichi テーマを取り扱っています。Twenty Thirteen テーマは多機能ですが、その分、マスターするのは大変だったりするので、Twenty Thirteen テーマよりシンプルな sonoichi をカスタマイズしていく、という方法は学習しやすくて良いのではないでしょうか。ただしテーマのコードをしっかり読んでいく書籍なので、HTML, CSS, PHP の基礎は習得済みでないと読み進むのは大変かもしれません。
テンプレート階層と条件分岐タグについて、詳しい解説があります。また両者をどう使い分けるか?という観点での比較もあります。この辺りはテーマ作成者が読むと役立つことが多いでしょう。
公式ディレクトリのテーマやcodexを推奨しているのは好感が持てますね。書籍の情報は、発売から時間が経過すると古くなっていきます。なので最新情報を調べるのにどうすれば良いか?という問題があるのですが、そこに適切な答え(codex参照)があるのは素晴らしいです。
公式テーマは、実はかなり基準が厳しいです。「WPの標準機能にきちんと対応する」のは当然ですが、「管理画面だけで完結する」「言語リソースを用意すれば、どの言語でも使える」などが要求されます。特定のお客さん向けに作る場合とはかなり異なり、テーマ作成の広い範囲の正確な知識が必要になります。公式テーマを作成している方なら、WPテーマのお作法をしっかりしている、といってよいでしょう。一戸さんからテーマ作成方法を学べるのですから、この本はお得だと思います。
公式テーマを作成している日本人の方は少ないようです。私が知っている範囲だと、sysbirdさん、ichi67さん、primestrategyさん、imai5さん、nobitaさん、mono-labさんです。もし日本人の方で、私も公式に登録している、という方がいらっしゃいましたら、コメント等でお知らせいただければ追加します。
テーマのカスタマイズ方法として、子テーマもとりあげられています。「公式テーマの子テーマを作る」(公式テーマをベースにカスタマイズする)ことで、WPのお作法に従って効率よく作る事ができます。しかし、子テーマを扱ったカスタマイズはまだまだ浸透していないようなので、もう少しページ数を割いても良かったかもしれません。
「利用者が多い」のはなぜか
WordPressのメリットとして、第1章24ページで
利用者が多く、日本語資料が豊富
となっています。確かにその通りなのですが、ではなぜ「利用者が多い」のか、も大事ではないでしょうか。利用者が多ければ良いのであれば、アメブロでいいじゃん、という結論になるかもしれません。
この章の後のほうでは、WordCampやWordBench等に参加してみよう、ということも書かれていました。なのであえて「利用者が多い」理由を書かなかった、すなわち、「言葉で記述するのではなく、参加して実感してもらいたい」ということなのかもしれません。
読むべき人は
仕事で WordPress テーマを作ったり、カスタマイズしたりしている人は読むべきでしょう。公式テーマに登録しない場合でも、WP のお作法をきちんと知ることは大事です。
ブロガーやホームページの運用担当者など、コンテンツを書くことがメインの人は、読んでも得るものは少ないでしょう。営業やディレクションがメインの人は、コードの隅々までじっくり読む必要はありませんが、「WP のテーマはどういうものか」を押さえておくために読んでおくと良いかもしれません。